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雑記、時々熱弁
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No.44
2014/03/27 (Thu) 00:29:51

以前の日記だったりTwitterだったりでたまーに話していた、
十遊パラレルネタを少し文章にしてみました。この記事の追記から読めます。
「十代と遊星の初めての邂逅の瞬間」はこんな感じです。

パラレルのため創作設定が多々含まれますので、苦手な方はご注意ください。

以下、概要です。

コンセプト:永遠の時をかける十代と遊星が、世界のどこかで稀にすれ違う。
・「人と精霊を繋ぐ者―――転じて、緑繋者」遊城十代
幼い頃から、目に見えないものと交流する力を持ち、
精霊関連など非現実的な事象の対応に奔走している。
精霊・ユベルと魂を融合しているため、不老長寿。限定的ではあるが、時空超越能力も持つ。
日常的な世界から離れがちではあるが、生活に困らない程度には機械類は扱える。
・「歩く巨大書庫」不動遊星
あらゆる万物すべてに関わる事象を網羅した膨大な量の書物を保管・管理している。
高い技術・知性を持ち合わせており、魔術にも精通している。
自らが作ったサポート型ロボット「ジャンク・シンクロン」とともに、
時間・世界・権力に縛られずにふらりふらりと各地をきままに移動しては情報収集をしている。


 石畳で舗装された道。木や煉瓦などで作られ、密集するように立ち並ぶ民家。
 太陽は真上よりやや西に傾いている。
 遠くから聞こえる人々の喧騒を耳にしながら、
 人一人と馬車一台分が通れる程度の幅の道に、
 一人の男と100cmほどの大きさのロボットがいた。

 男は黒髪に金のメッシュが入った特徴的な髪で、
 眼鏡の奥には涼やかで、やや釣っている眦がある。
 一見すると牧師のような恰好で、くすんだ色の手袋をしていた。
 ロボットは少し凹凸のある鍋をひっくり返したような帽子風の頭部の下に、
 丸メガネに黒点を一つだけ描いた目、やや背丈より長い白の襟巻をたなびかせ、
 背中にはバッテリーのようなものを背負っていた。

「終わったぞ」

 男はそう言うと、持っていた工具を足元の工具箱へ仕舞った。

「どうだ?」

 男が軽く首を傾げながら、ロボットに向かって尋ねる。
 ロボットはその容姿からは考えられない身軽な動作で飛んだり跳ねたりを2、3回繰り返すと、無邪気な子供の様な明るい口調で答えた。

「バッチリです! 感謝します、流石マスター!」
「調子に乗っていると、今に壊れるぞ」
「こうやってマスターがきちんと定期メンテナンスを
してくださっているんですから、大丈夫ですっ」

 仕方のない奴だ、と呟きながら、男は苦笑した。
 賑やかに動くロボットを見ながら、男が工具箱を二回ほど指先で叩くと、
 一瞬で工具箱はカードに変わり、男はそれを腰のケースに収めた。

「行くぞ」
「はい、マスター!」

 先に歩き出した男の後を、ロボットはすぐに追う。

「マスター。次はどちらへ?」
「そうだな…ここのところ、お前に負担をかけてしまっていたからな。
少し、休暇にしようと思う」
「そんな…マスターに気遣っていただくなんて、畏れ多いです。
僕は、マスターのお役に立てればそれで幸せなんですよ」

 申し訳なさそうに身を小さくするロボットに、男は優しく微笑んだ。

「そう言ってもらえるのは嬉しいが、休める時に休むのも仕事だぞ。
俺達の役目は、誰に強制されるものでもないから、いつ休んでも問題ないだろう?」
「…それは、そうですが」

 そう言って、ロボットは頑として首を縦に振ろうとしない。
 普段は従順だが、譲れないところに関しては譲らないところは、当初から変わっていない。
 男は一度立ち止まると、屈みこんでロボットと視線を合わせた。

「マスター?」
「さっきのメンテナンスで不具合は直したが、お前に過剰な負荷がかかっていたことは確かだ。
一度、きちんと休みながら調整をしたい。今後、何かあってからでは遅い。
お前にいなくなられたら、それこそ俺が困るんだ」

 男がロボットの目を見据えて言うと、ロボットは多少逡巡する動作を見せた後、
 やっと首を縦に振った。

「…分かりました」

 その様子を見とめると、男はうっすらと微笑んだ。

「分かればよし。じゃあ、何処か行きたい場所はあるか?」
「マスターとご一緒できるなら何処へでも!」
「まったくお前は…」

 男が苦笑交じりに小さく溜息をついた時だった。
 意識に僅かに引っかかった違和感に、男は動きを止め、表情を険しくした。
 それを訝しんだロボットも、やや遅れて何かに気付くと主を守るように前へ立った。

 とん、とん、と遠くから、一定の間隔で音が近づいてくる。
 どの方向からのものかはっきり分かると、男とロボットはその方向へ意識を向けた。
 どうやら地面ではなく、上からのものであると分かり、周囲の建物の屋根を見上げる。 

 そして音がより鮮明に周囲の空気を震わせていると感じるようになって、やや数秒。

 建物と空とが広がっていた男とロボットの視界に、赤い塊が飛び込んできた。

「見、つ、けっ……たぁぁあーーー!!!」

 その赤い塊は、だんっと鈍い音を立てて建物の屋根を力強く蹴ると、
 勢いそのままに男とロボットのところへ飛び降りてくる。

「マスター!」
「奴に攻撃の意思は感じない。応戦はするな。
が、3メートルほど後退だ、ジャンク・シンクロン。万が一の直撃を避ける」
「はい!」

 男とロボット―――ジャンク・シンクロンが軽く地面を蹴って後退すると、
 ほぼ同時に赤い塊は地面に降り立った。

 飛び降りてきた赤い塊は、20代くらいの青年だった。
 明度の異なる栗色のツートーンの髪に、明度の低い髪の色と同じ栗色の瞳。
 燃えるような真っ赤なジャケットに、手には黒と赤のボンサック、
と、その肩にはやや太めの猫。

 男はそれらの青年の特徴から、一つの可能性をはじき出した。

「お前は……」

 そして青年はくるりと男とジャンク・シンクロンに向き直ると、
 やや外見よりも幼い、無邪気な笑顔を見せた。

「やっと見つけたぜ。『歩く巨大書庫』不動遊星!」
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